以下のマイナスイオンについてのコンテンツは、執筆者であるssfsさんから、次のとおり私のブログに転載の依頼があったものです。

 

改悪に次ぐ改悪のヤフーサイトでは、今月末[2017年11月末]で知恵袋がなくなってしまいます。そこでお願いがあるのですが、私の「マイナスイオンとは何か」の内容を貴サイトの別室に収録していただけないでしょうか。

https://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n142879

かなり手をかけて作ったものですが、すでに検索には引っかからなくなってしまいました。愚にもつかない疑似科学評定サイトよりはよほど世の中のお役に立つものだと信じています。

自力でサイト開設・維持する能力がありませんのでお頼みする次第です。よろしくご検討ください。 

by ssfs (2017-11-15 23:28) 

 

基本的に原文をそのまま転載していますが、システムの都合でレイアウトを多少手直ししています。

なお、内容については一切無保証で、かつ質問も受け付けませんので、あらかじめご承知おきください。

【注】マイナスイオンの測定法は、JIS(B9929:2006)で2006年に規格化されています。

2017.11.25更新

2019.1.16消費者庁のリンクを修正


マイナスイオンとは何か?

ライター:ssfs21thさん(最終更新日時:2017/9/27)投稿日:2013/1/1
ナイス!:27 閲覧数:79488

 

★マイナスイオンの基本

マイナスイオンとは、空気中を浮遊する「負電荷を帯びた微粒子水」です。同じく空中浮遊する「水分子がくっついた負イオン」と言い換えることもできます。「大気負イオン」という学術用語があり、その別称です。英語では普通negative air ionと呼ばれます。

歴史をさかのぼると、陰極線の研究で1905年のノーベル物理学賞を受賞したドイツの学者、フィリップ・レーナルトが「マイナスイオンの父」とされています。 レーナルトは1892年、滝などで落下する水滴の帯電現象、いわゆるレナード効果を
科学的に説明しました。

日本では1922年(大正11年)の電氣學會雜誌に「マイナスイオン」という言葉が学術的な意味合いで登場しています。1993年の日本エアロゾル学会誌の論文では「負の水和物イオン」のことを「マイナスイオン」と表現しました。2003年には同誌が大気負イオン全般を解説する特集を出しています。

マイナスイオンは空気を構成する分子にエネルギーが加わると発生します。主な成因は(1)水破砕(2)放電(3)宇宙線・放射線―の3つ。学校で学ぶ水中のイオン、あるいはイオン液体のイオンとは成因も性質も異なります。「マイナスイオンは存在しない」と言う人もいますが、それは間違いです。

マイナスイオンを構成する負イオンはO-、O2-、O3-、CO3-、CO4-、NO2-、NO3-など数多くあります。水蒸気など空気中の微量成分によって大きく変わり、時間的にも目まぐるしく変わります(
学術論文の例)。だから、「マイナスイオンとは何のイオン?」という問いに正確に答えることは誰にもできません。

マイナスイオンという言葉は1980年代以前にも一般的に使われていましたが、2000年ごろのマイナスイオンブームで一気に広がりました。当時「マイナスイオンは身体に良く、プラスイオンは体に良くない」と言われ、「身体に良い」ことをうたう商品はいまだにあります。しかし、表現が漠然すぎるため、具体的な効果は不明です。

ただし、水が破砕する滝つぼや激流、海岸などではレナード効果により、マイナスイオンが多めに存在します(
学術論文の例)。そんな自然環境は爽快な場所であることが多いので、マイナスイオン量は爽快さの目安にはなります。都市環境で人工的にマイナスイオンを増やしても、爽快さを得ることはできません。

マイナスイオンの計測方法は2006年に日本工業規格(JIS)が定められ、特定非営利活動法人(NPO法人)の
日本機能性イオン協会が測定業務を行っています。市販のイオンカウンターでも簡単に計測することができます。

学術情報を総合的に扱う科学技術振興機構の
サイトの検索窓に「マイナスイオン」と入れて検索ボタンを押すと、約200件の文献が見つかります。内容は玉石混交ですが、マイナスイオンが10年以上も前からさまざまな学術研究の対象になっていることを確かめてください。

★マイナスイオンの応用

マイナスイオンは電極に放電するだけで比較的簡単に作れます。家電各社は1990年代半ば頃から研究開発を進め、マイナスイオンを応用した家電製品はヘアドライヤー、空気清浄機、エアコン、加湿器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、扇風機などたくさんあります。単独のマイナスイオン発生器も売られています。

こうしたマイナスイオン関連製品の効果は、理美容、消臭、抗菌、抗ウイルス、除電、集塵、酸化防止など多岐に及んでいます。漠然とした「身体に良い」ではなく、具体的な効果が明らかになっていることに注目すべきです。

最も成功した商品であるヘアドライヤーは、2016年末までに家庭用と業務用を合わせて推計5000万台以上が国内で販売されました。髪にツヤや潤いを与える効果が多くのユーザーによって確かめられ、それまでの「乾かすだけのドライヤー」とは一線を画す製品になっています。

家電各社はマイナスイオン研究から派生した
プラズマクラスターイオン(シャープ)、ナノイーイオン(パナソニック)、光速ストリーマ(ダイキン工業)、ピコイオン(東芝)などのブランドを持っています。シャープやパナソニックは、アジア各国への製品輸出に力を入れています。

マイナスイオン関連の応用に関する学術論文には、
金沢大などによる論文のほか、帯電微粒子水(ナノイー)に関するものプラズマクラスターに関するものなどがあります。

マイナスイオンの医学的効果として、しばしば疲労回復やストレス抑制などが挙げられますが、明瞭ではありません。ただし、例えば米コロンビア大は、ある種のうつ病の患者に対して薬物を用いずに
高濃度のマイナスイオン環境に曝露する療法を試みており、一定の成果を上げています。 詳しい作用機序は研究中だということです。

欧州原子核研究機構(CERN)は2011年、宇宙線が「イオン誘発核生成」というプロセスを経て、雲の元となるエアロゾルの形成を促進している可能性を明らかにしました。マイナスイオンは以前から、高層大気でエアロゾルの形成に関与していることが知られており、地球温暖化のカギを握る雲の生成にも関わっているといえます。

★マイナスイオンへの疑問

マイナスイオンにはこのようにさまざまな特徴がありますが、「ニセ科学」を批判する大学教授らは、詳細な調査や丹念な分析をせず、実態に合わない主張をしています(例:
資料1資料2資料3資料4資料5)。また、ウィキペディアにあるマイナスイオンの項目は、改善はされつつあるものの、まだ不適切な記述が残っているので、引用の際は十分注意しましょう。

2016年2月に出版された「なぜ疑似科学が社会を動かすのか」(PHP新書)の末尾で、著者の石川幹人・明治大学教授は、マイナスイオンを疑似科学扱いしました。しかし、「マイナスイオンが体に良いかどうか」という視点しか持たず、上記の応用例に無頓着です。致命的なのは、ヘアドライヤーに関する知見を持ち合わせていないことであり、石川氏にはマイナスイオンを論じる資格がないと断言できます。

2014年に立ち上がった明大の「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」のマイナスイオンの項目は、マイナスイオンどころか社会の一般常識にも疎い石川氏傘下の大学院生が不適切な資料をもとに、偏見を書き並べています。このダメなサイトが文科省の科学研究費補助金で運営されていることは、現代社会の闇を感じさせます。

国立病院機構仙台医療センターの西村秀一氏が2012年、プラズマクラスターやナノイーについて、イオンの殺菌効果はないという否定的な実験結果を公表していますが、過去の知見(例えばこの学術論文)を踏まえてはいません。実験条件にも疑義があり、「ない」ことの実証に慎重さが欠けているといえます。

消費者庁は2012年、シャープのプラズマクラスター掃除機のカタログなどにおける性能表示が消費者に「優良誤認」させるものとして
措置命令を下しました。しかし、判断の根拠を科学的に示さず、メディアを通じてプラズマクラスター製品全般に効果がないと消費者の「劣悪誤認」を誘う行政処分でした。

2006年の
東京都の報告書がしばしばマイナスイオン商品のあやしさを科学的に検証した証拠として挙げられますが、きわめてマイナーな商品を対象にしており、そもそもマイナスイオンの発生すら疑われています。マイナスイオン商品全般に拡大解釈しないよう、報告書の表紙でわざわざ断っています。

国民生活センターは2003年の
報告書でマイナスイオンの販売方法に疑問を投げかけました。しかし、科学的な考察を欠いた中途半端な分析に終始しており、資料としての価値は極めて低いといえます。同センターはその後、マイナスイオン商品を再評価していません。

公正取引委員会は、かびなどの発生を防ぐマイナスイオン水(2005年)、マイナスイオン健康米(2007年)、マイナスイオンによる自動車の燃費向上グッズ(2008年)などを摘発しています。こうした効果がないキワモノ商品とは異なり、大手メーカーの家電商品は対象になったことがありません。

ヤフーの掲示板・知恵袋・知恵ノートなどで、ニセ科学批判を鵜呑みにして、マイナスイオンをいたずらに疑問視あるいは攻撃する投稿者が少なからずいます。しかし、基本的な事実確認を怠ったり、根拠のある知見を曲解したりしているので、風聞の流布に加担しているといえます。

ヤフー掲示板「マイナスイオン」監視室の運営は、2016年1月6日、私が8年以上も様々な情報提供を続けている掲示板上の投稿をごっそり40件以上も削除する暴挙に及びました。こうした理不尽な行為はマイナスイオンのよりよい理解にとって大きな妨げとなります。

 

★補足

知恵ノートはそれなりの役割を果たしていると思うので、[2017年]11月以降も閲覧に残すべきコンテンツだと思います。