Trivia - ミニ知識

性格用語の曖昧性

能見正比古さんの『血液型人間学』にはこうあります

 

私は、よく、こう申し上げる。

「血液型でわかるのは性格のうちの4分の1ですよ」

人間の性格は、先天的気質と後天的な形成の両者から成る。血液型が関連するのは、先天的な気質の部分だから、まず、半分。その気質は、野菜の個性と、血液型による共通性が、また、半々と見て、合計4分の1という大まかな計算である。

 

また、彼はこうも言っています。

 

[氏の血液型と性格の研究が進展しなかった]最大の原因は、従来の常識的性格観に、 とらわれすぎたせいである。人々はすぐ性格に類型をつくりたがる。私も、O型はこれこれのタイプ……という決め方をしようと焦っていた。そんな類型をつくり得るほど、性格の本質は、とらえられていないのである。

(能見正比古 O型は人間は権力志向型なんだって-血液型性格学 別冊宝島6 性格の本-もうひとりの自分に出会うためのマニュアル』1977.8)

 

神経質という言葉は、古代ギリシャの時代から使い古されてきた言葉である。これこそ絶対、性格用語の本命のように思われている。しかし、改めて吟味して見ると、これまた性格を示す言葉としては、使いものにならないことがわかる。

つまり、ある状況の下には神経質だとか、ある方面には神経質であるとか、ないとかは言うことができる。だが、全方向に神経質な人は、まず、絶対といっていいほどいない。ある人は着るものに神経質で、別の人は食事に神経質だろう。その違いが、性格を語るのに重要なのである。

最近聞いたO型のある高級官僚氏は、趣味の音楽鑑賞はうるさく、神経質なくらいと言われていた。その同じ人が、湯たんぽのお湯を平気で煮炊きに使うという。神経質なんてそんなものである。

(能見正比古 『新・血液型人間学』 1980)

 

O型は身体や健康について神経質。病的な潔癖症や高所恐怖症もある。社会の中での他人の目、好意や悪意にも神経質となる。/A型は周囲の動きや反応、それに対する自分の姿勢に神経質。物事のケジメ、善悪の評価などに潔癖。未来への悲観主義や、仕事などの完全主義傾向も一種の神経質だ。/B型は自分の気分調整に神経質。行動を制約された状態ではイライラ。過ぎたことにクヨクヨ。事実関係の正誤にもうるさい。/AB型は、人間関係で神経質となりがち。対人恐怖症も一部にいる。自分の社会的役割りや仕事面の蝿張り保持に神経過敏。経済生活の基盤がガタつくと、度を失い気味。/以上[神経質]の例でも判るように、現在、日常で性格を指す言葉として使われているもので厳密には、性格を明示するに足るものは、ほとんどない。

 (前掲書より)

2016.8.27更新

血液型が性格に影響する程度・方向は性別や年齢によって変わる

「有名な特性」以外では、血液型が性格に影響する程度・方向は性別や年齢によって変わります。次はその具体例です。

 

坂元章さんは、年齢によって血液型の特徴に差があるかどうか調べてみました(山崎賢治・坂元章 血液型ステレオタイプによる自己成就現象-全国調査の時系列分析- 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 pp288-291, 1991年)。彼によると『高年齢であるほど「A型的」特徴があてはまる』という結果が得られたとのことです。また、最近になるほど「日本人はB型的になってきている」のだそうです。 

 

それとは別に、大村政男さんによる研究報告で、『「血液型気質相関説」と「血液型人間学」の心理学的研究II』(日本大学 研究紀要, vol. 46, pp115-155, 1993年)というものもあります。冠状動脈性心疾患(oronary Heart Disease, CHD)を発病しやすい行動パターンを意味するタイプA行動が血液型によって差があるかどうか調べたものです。この研究報告のデータを使って男性だけ計算してみると、O型がタイプA的な性格であることがわかります。念のために、χ2値を計算してみましょう。これは5.76という値が得られるので、2%以下で有意となります。確かにO型はタイプA的な性格であることが証明できました。タイプA的性格を示す質問の肯定率は、O型が46.6%、A型が43.3%、B型が43.0%、AB型は41.6%となりました。

しかし、女性では(有意差は出ていないものの)男性とは逆の傾向を示しているようです。このことは、血液型による影響が男性と女性とで正反対に表れる可能性を示しています。

 

このように、血液型の特徴は性別、年齢、時代によって変わってきます。ですから、血液型の差を正確に比較しようとするなら、なるべく同質のサンプルで比較する必要があります。ランダムサンプリングをすると、「有名な特性」はともかくとして、微妙な差は性別、年齢、時代などの「ノイズ」に埋もれてしまう危険性があるのです。

2016.8.27更新

遺伝子が性格に影響する程度・割合は心理学で分析できない!?

最近はすっかり遺伝子ブームです。

血液型に限らず、遺伝子がどのように性格に影響するかという研究が数多く発表されています。

しかし、心理学の枠組みで「遺伝子と性格」や「血液型と性格」を分析すると、思いもよらない結果が出たりするので驚かされます。

ここでは、そういう不思議な現象を紹介しておきましょう。

 

「セロトニン」という名前を聞いたことがあるでしょうか? これは、性格に大きな影響を与える神経伝達物質の1つです。

神経伝達物質というのは、神経細胞から別の神経細胞へ情報を伝達する媒介となる物質のことです。

さて、セロトニンの活性に関係する神経伝達物質である「セロトニントランスポーター」の遺伝子には、LL、LS、SSの3種類があり、種類によって性格に差が生じることが、多くの研究で確かめられています。

最近になって、この遺伝子の影響度を「アンケート調査」で比較分析してみたところ、心理学の「性格検査」より差が大きく出たという報告がありました。

つまり、遺伝子の影響を調べるには、心理学の枠組みにこだわりすぎると失敗する――というのは言い過ぎでしょうが、少なくとも心理学がアプリオリに正しいと考えてはいけないということです。

 

以下は、金澤正由樹さんの「B型女性はなぜ人気があるのか」からの抜粋です。

 

London School of Economics and Political Sceinece 

New study is first to identify a "happiness gene" (2011)

http://www.lse.ac.uk/newsAndMedia/news/archives/2011/05/happiness_gene.aspx

☞任意のアンケート(幸福かどうか69% vs 38%) 効果量[影響の大きさ]:(φ=0.3)

Lesch KP, Bengel D et al., Association of anxiety-related traits with a polymorphism in the serotonin transporter gene regulatory region, Science. 1996 Nov 29;274(5292):1527-31.

☞心理学の性格検査(NEO-PI-R SD=0.29)効果量[影響の大きさ]:小~中(d=0.29)

 

血液型でも同じような現象が起きている。前著にも書いたが「ビックファイブ」という性格検査では、血液型による性格の差をうまく検出できないようなのだ。遺伝子と性格の関係は、意外に奥が深いようである。

2016.9.3更新